第32章 狂ったブラッジャー
「タイムだね〜」
エイミーの言葉通り、グリフィンドール側がタイムを取ったみたいだ。おそらくハリーを執拗に狙うブラッジャーの事を話すのだろう。
「何を話しているのかしら」
「なんだろうね〜」
クレアとエイミーがそう言ったとき、フーチ先生のホイッスルが鳴り響いた。ハリーは、輪を描いたり急降下したり螺旋,ジグザグしたりと動き廻る。さらにハリーは箒から逆さにぶら下がった。それを見て笑っている声が聞こえる。
「バレエの練習かい?ポッター」
そこに、ドラコの叫び声が聞こえてきた。
『ドラコは、ハリーを気にしすぎよ...』
ドラコを睨み付けるようにみたハリーは、空中で立ち往生した。そのとき、ブラッジャーがついにハリーを捉え、肘を強打したのだ。
『あれは痛いわ...』
私は自分がされたことのように顔をしかめる。辛そうなハリーは突然急降下した。その先にはドラコがいる。ドラコは恐怖で目を大きく見開き、ハリーの進路を避けて疾走した。
ハリーは片手を箒から離し、激しく空を引っ掻くようにして手を握りしめると、ハリーはまっしぐらに地面に向かって突っ込む。それを見た生徒から叫び声があがる。ハリーは泥の中に落ち、箒から転げ落ちた。ハリーがスニッチを掴んだことがわかると歓声がわきあがる。
『私、ハリーの様子を見てくるわ!』
この後の展開を思い出した私は急いでハリーのところへ向かう。ハリーの周りには、グリフィンドールの選手が心配そうにハリーを見つめており、その近くにはロックハート先生がいた。
「ハリー、心配するな。私が君の腕を治してあげよう」
私がようやく近づくとそんな声が聞こえてきた。
「やめて!僕、腕をこのままにしておきたい。かまわないで...」
体を起こそうとするハリーだが、痛いのか顔をしかめた。その様子を一年生のハリーの大ファンだと噂の、コリン・クルービーが写真を撮っている。
「コリン、こんな写真は撮らないでくれ!」
大声をあげたハリーをあやすように、ロックハート先生はこう言った。
「横になって、ハリー。この私が、数え切れないほど使ったことがある簡単な魔法だからね」
「僕、医務室に行かせてもらえませんか?」
歯をくいしばったハリーはそう頼む。
「先生、そうするべきです」
泥だらけのウッドも同意をするようにそう言った。