第32章 狂ったブラッジャー
私は授業が終わった後、ハリー達と図書館で待ち合わせをしていたのだ。作戦とはこうである。とてもシンプルなもので、ロン曰く無能なロックハート先生なら騙されるのではないかとみんなの意見が一致したのだ。
いやみんなではない、ハーマイオニーを除いた私達3人である。この作戦は3人に任せた。なぜなら私がロックハート先生に用があると言ったらクレア達に変に思われるかもしれないためだ。
『どうだった?』
図書館に入ってきた3人に声を潜めて聞くと、3人共頷く。そして、私達はマダム・ピンスのところにやってきた。
「'最も強力な魔法薬'?」
マダム・ピンスは疑わしげにもう一度聞き返し、許可証をハーマイオニーから受け取ろうとした。しかし、ハーマイオニーは離さない。
「これ、私が持っていてもいいでしょうか」
『...ハーマイオニー...』
唾を飲み込むようにして言ったハーマイオニー。私はそんなにロックハート先生を好きなのかと微妙な気持ちになった。
「やめろよ」
ロンは、ハーマイオニーがしっかり掴んだ紙をむしり取ってマダム・ピンスに差し出す。
「サインならまた貰ってあげるよ。ロックハートならサインする間だけ動かないでじっとしてる物なら、なんにでもサインするよ」
ハリーはそう言って、ハーマイオニーを宥めた。マダム・ピンスは偽物なら何がなんでも見破ってやるというように、紙を明かりに透かして見ている。しかし、本物に違いないので検査は無事通過した。
マダム・ピンスは数分後に、大きなカビ臭さそうな本を持って来てハーマイオニーに渡す。ハーマイオニーが大切そうにそれをカバンに入れると、私達はあまり慌てた歩き方に見えないように気をつけながら、その場を離れた。
「僕、やだよ!」
「あら!あそこよりいいところがあるなら、そこでもいいわよ?」
私とハーマイオニーは、マートルのいるトイレに向かっていた。それに気づいたロンが叫ぶ。しかしすぐに反論したハーマイオニーに何も言えずに黙りこむロン。結果、ロンの抗議は無視され私達はマートルのいるトイレに来ている。
『そうね...、3人共ちょっとここで待ってもらえるかしら?すぐに済むわ』
にっこり笑う私に、3人は少し戸惑いながらも頷いた。そこで私はトイレに入っていく。
『マートル?』
「あら、ユウミじゃない!」