第32章 狂ったブラッジャー
あのピクシーの悲惨な事件以来、ロックハート先生は教室に生物を持って来なくなっていた。そのかわり自分の著書を拾い読みし、時にはその中でも劇的な場面を演じて見せたのだった。
「あんなの授業って〜言えないよね〜」
『...そうね。なんの勉強をしているのかわからないわ』
そしてまさに私達はその授業を受けるために、教室に向かっているところである。その途中、エイミーの言った言葉に私達は同意した。
「でも、ハリーが一番可哀想よね」
クレアの言葉はもっともで私達は納得して頷く。なぜならロックハート先生は、現場を再現する時はたいていハリーを指名して自分の相手役を務めさせたからである。
ハリーがこれまでに演じさせられた役は、鼻かぜを惹いた'イェティ(雪男)',ロックハート先生にやっつけられてからレタスしか食べなくなった'バンパイア(吸血鬼)'などだ。今日の授業でも、案の定ハリーはまたもやみんなの前に引っ張り出され、'ワーウルフ(狼男)'をやらされることになった。
「ハリー、大きく吼えて。そう、そう。そしてですね、信じられないかもしれませんが私は飛び掛かった。...こんなふうに相手を床に叩きつけ,こうして片手でなんとか押さえつけ,もう一方の手で杖を喉元に突きつけ,それから残った力を振り絞って非常に複雑な'異形戻しの術'をかけた。敵は哀れな呻き声をあげ。ハリー、さあ呻いて。もっと高い声で。そう。毛が抜け落ち,牙は縮み,そいつは、人間の姿に。簡単だが効果的です。こうして、その村も満月のたびに'ワーウルフ(狼男)'に襲われる恐怖から救われ、私を永久に英雄として称えることになったわけです」
ロックハート先生は、ハリーと共に実演をしながらそう説明した。授業終了の鐘が鳴り、ロックハート先生は立ち上がる。
「宿題、ワガワガの'ワーウルフ(狼男)'が私に敗北したことについての詩を書くこと! 一番よく書けた生徒にはサイン入りの'私はマジックだ'を進呈!」
「いらない〜」
「そもそも詩って...」
エイミーとミアがそう話している。これには私も大いに同意だ。みんなが教室から出ていき始める。私は、ハリー達が作戦を実行しようとしているのを横目に、クレア達と一緒に教室から出たのだった。
『クレア,ミア,エイミー、私図書館に行くわ!』
私は3人にそう告げ、別れた。