第31章 疑い
私達4人に水飛沫を浴びせ、マートルは姿を消した。私が今まで声を出さなかったり、見つからないようにした理由を説明をすると、マートルとは実は仲良しなのだ。フラリとここに来たときにマートルと出会い、仲良くなったのだ。
今、ハリーとロンにマートルのことを知ってもらうために私は何も話さなかった。私といるときのマートルはこうではないのだから。口をポカンと開けて突っ立っているハリーとロン。ハーマイオニーはやれやれという仕種をしながらこう言う。
「まったく、あれでもマートルにしては機嫌がいいほうなのよ。さあ、出ましょうか」
ハリーがトイレのドアを閉めないうちに大きな声が聞こえてきて、私達は飛び上がる。
「ロン!」
声の聞こえた方を見るとそこには、監督生のバッジをきらめかせ、衝撃を受けた表情をしているパーシーがいた。
「そこは女子トイレだ!君達、いったい何を...?」
「ちょっと探してただけだよ。ほら、手掛かりをね」
ロンが肩をすぼめて、なんでもないという身振りをした。
「そこ、から、離れるんだ」
それを聞いたパーシーは、大股で近づいて来て腕を振って私達をそこから追い立て始めた。
「人が見たらどう思うかわからないのか?みんなが夕食の席に着いているのに、またここに戻って来るなんて...」
「なんで、僕たちがここに居ちゃいけないんだよ」
ロンは立ち止まって、パーシーを睨みつける。
「いいかい。僕たち、あの猫に指一本触れてないんだぞ!」
ロンは心外だという様子だ。
「僕も、ジニーにそう言ってやったよ」
語気を強めるパーシー。
「だけどあの子は、それでも君たちが退学処分になると思ってる。あんなに心を痛めて、目を泣き腫らしてるジニーを見るのははじめてだ。少しはあの子のことも考えてやれ。1年生はみんな、この事件で神経をすり減らしてるんだ」
「ジニーのことを心配してるんじゃない。パーシーが心配してるのは、首席になるチャンスを僕が台無しにするってことなんだ」
ロンは耳を真っ赤にさせてそう言った。
「グリフインドール、5点減点!」
監督生バッジを指で触りながら言ったパーシー。
「これで、おまえにはいい薬になるだろう。探偵ごっこはもうやめにしろ。さもないと母さんに手紙を書くぞ!」
パーシーはロンの耳と同じように首筋を真っ赤にしながら、大股で歩き去った。