第30章 伝説
私達が人波に流されて行く途中、コリンがハリーの近くを通った。
「やあー、ハリー!」
「やあ、コリン」
ハリーはコリンの言葉に、少し心ここにあらずというような様子で答える。
「ハリー、ハリー、僕のクラスの子が言ってたんだけど、君って...」
コリンがそこまで言いかけると、コリンは小さめの体が影響したのか人波に逆らえず大広間のほうに流されていってしまう。
「あとでね、ハリー!」
コリンはそう叫ぶ声を残して行ってしまった。
「クラスの子があなたのこと、なんて言ってたのかしら?」
途中で遮られた言葉に、ハーマイオニーが怪訝な顔で問いかける。
「僕がスリザリンの継承者だとか言ってたんだろ」
ハリーはそう言い、落ち込んだようだ。そんなハリーを見たロンはこう吐き捨てる。
「ここの連中ときたら、何でも信じ込むんだから」
混雑も一段落したので、私達は楽に進むことが出来た。
「'秘密の部屋'があるって、本当にそう思う?」
ロンが疑問をなげかけた。それに答えたのはハーマイオニー。
「わからないけど。ダンブルドアが、ミセス・ノリスを治してやることができなかったということを私、考えてたんだけど...。猫を襲ったのはもしかしたら、うーん...人間じゃないかもしれない」
眉根に皺を寄たハーマイオニーがそう言ったとき、私達はちょうど角を曲がり、あの事件があった廊下の端の場所へと出た。私を除く3人は辺りを見渡す。
「あそこ、フィルチが見張ってるとこだ」
ロンの呟きに私達は、顔を見合わせた。廊下には誰もいない。
「ちょっと調べたって悪くないだろ」
そう言ったハリーはカバンを放り出し、四つん這いになって、探し始めた。
「焼け焦げだ!あっちにもこっちにも」
ハリーが叫ぶ。
「来て、これを見て!変だわ」
それに続いて何かを見つけたハーマイオニーが私達を呼んだ。
ハーマイオニーに呼ばれたところに近づく。すると壁の文字のすぐ脇にある一番上の窓ガラスを指差していた。そちらを見ると、たくさんのクモが、ガラスの小さな割れ目から先を争って這い出そうとしている。
「クモがあんなふうに行動するのを見たことある?」
ハーマイオニーは不思議そうに言った。
『ないわ...』
「僕も。ロン、君は?...ロン?」
ハリーが近くにいたはずなのにいないロンを振り返る。