第30章 伝説
「スリザリンはマグルの親を持つ生徒は学ぶ資格がないと考えて、入学させることを嫌ったのであります。しばらくして、この問題をめぐり、スリザリンとグリフィンドールが激しく言い争い、スリザリンが学校を去ったのであります」
この授業では初めてと言っていいほどみんな真剣に聞いている。
「信頼できる歴史的資料はここまでしか語ってくれんのであります。しかし、こうした事実が'秘密の部屋'という空想の伝説によって、曖昧なものになっておるのです。スリザリンがこの城に、他の創設者にはまったく知られていない隠された部屋を作ったという話があるのです。その伝説によれば、スリザリンは'秘密の部屋'を、この学校に彼の真の継承者が現われるときまで開けることができないようにしたということなのです。その継承者のみが'秘密の部屋'の封印を解き、その中の恐怖を解き放ち、それを用いてこの学校から魔法を学ぶにふさわしからざる者を追放するということなのです」
ビンズ先生がここまで語り終えると、沈黙がこの教室を支配した。みんなはまだ、聞き足りないのかビンズ先生をじっと見ている。それを受けてビンズ先生は口を開く。
「もちろん、全くの無意味です。当然ながら、そのような部屋の確証を求め、最高の学識ある魔女や魔法使いが、何度もこの学校を探索したのでありますが、そのようなものは存在しなかったのであります。騙されやすい者を怖がらせる作り話であります」
「先生...'部屋の中の恐怖'というのは具体的にどういうことですか?」
ハーマイオニーは手を挙げて質問する。
「何らかの怪物だと信じられており、スリザリンの継承者のみが操れる事が出来るという...」
みんなが怖がっているのを見たからかビンズ先生はこう付け足す。
「しかし言っておきましょう、そんなものは存在しない。'部屋'などありません、したがって怪物はおらんのです」
そんなビンズ先生に質問したのはシェーマスだ。
「でも、先生。もし'部屋'がスリザリンの継承者によってのみ開けられるなら、他の誰もそれを見つけることはできない、そうでしょう?」
それを聞いたビンズ先生は、声を険しくして答える。
「馬鹿げてます、オッフラハーティ君。歴代のホグワーツ校長と女性校長先生方が、何も発見しなかったのだからして...」
ビンズ先生を遮るようにバーバティが声をだした。