第30章 伝説
目をパチクリさせたビンズ先生はこう言った。
「私がお教えしとるのは'魔法史'です。事実を教えとるのであり、ミス・グレンジャー、神話や伝説ではないのであります」
ビンズ先生はそのまま授業を続けようとするが途中で止まる。ハーマイオニーが手をまた挙げたためだ。
「ミス・グラント?」
「先生、お願いです。伝説というのは必ず事実に基づいているのではありませんか?」
ハーマイオニーは自分の名前の訂正はせずに、そう言った。ビンズ先生はこの状況にとても驚いている。
「ふむ、そうですな、そんなふうにも言えましょう。たぶん」
ビンズ先生は考えながらそう告げた。
「しかしながらです。あなたがおっしゃるところの伝説はといえば、これはまことに人騒がせなものであり、荒唐無稽な話とさえ言えるものであり…」
今やみんながビンズ先生の一言を聞きのがすまいと言わんばかりに耳を傾けている。ビンズ先生はいつもは眠りについているみんなが真剣にこちらを見ているのを見て、観念したようだ。
「あー、よろしい。さて'秘密の部屋'とは皆さんも知っての通りホグワーツは、一千年以上も前にその当時の最も偉大なる四人の魔女と魔法使いたちによって、創設されたのであります。創設者の名前にちなみその四つの学寮を、次のように名付けたのであります。ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー、そしてサラザール・スリザリン。彼らは、マグルの詮索好きな目から遠く離れたこの地に、ともにこの城を築いたのであります。なぜならば、その時代には魔法は一般の人々の恐れるところであり、魔女や魔法使いは多大なる迫害を受けていたからであります」
長々と語ったビンズ先生はそこで一息入れた。そしてまた語り始める。
「数年のあいだ、創設者たちは和気藹々で、魔法力を示した若者たちを探し出しては、この城に誘って教育したのであります。しかしながら、四人のあいだに意見の相違が出てきたのであります。スリザリンと、他の三人とのあいだに亀裂が広がって行ったのです。スリザリンは、ホグワーツには選別された生徒のみが入学を許されるべきだと考えたのでした。スリザリンは、魔法教育は、純粋に魔法族の家系にのみ与えられるべきだという信念を持っておったのでした」
ビンズ先生はそこでもう一度一休みした。そしてまた再開する。