第29章 初めてのハロウィーン
みんなが静かに待っているなか、ロックハート先生はうろうろしながらそう言った。
「私がその場に居合わせなかったのはまことに残念。猫を救うぴったりの反対呪文を知っていたのに」
さらにロックハート先生はそう言いのけたのだ。しかし調べ終わったのか顔をあげたダンブルドア先生は優しくこう言った。
「アーガス、猫は死んでおらんよ」
ロックハート先生はこれまで自分が未然に防いだ殺人事件の数を数えている最中だったが慌てて止める。
「死んでない?それじゃどうしてこんなに固まって...冷たくなって?」
フィルチはミセス・ノリスが死んでしまったと思っていたようで戸惑ったようにそう言った。
「石になっただけじゃ」
「やっぱり!私もそう思いました!」
ロックハート先生はダンブルドア先生の言葉にすぐ同意した。さっきまで言ってたことはなんだったのかと突っ込みたくなる。
「じゃがどうしてそうなったのかはわからん...」
「あいつです!あいつがやったんです!壁の文字をお読みでしょう!あいつは私の事務所で知ったんだ...私が出来損ないの'スクイブ'だと!」
ダンブルドア先生の言葉を聞いてフィルチは顔を真っ赤にして苦々しげに叫ぶ。しかしその言葉を受けたハリーはすぐに否定する。
「僕、ミセス・ノリスには指一本触れてません!それに'スクイブ'がなんなのかも知りません!」
「バカな!アイツはクイックスペルから来た手紙を見やがった!」
そんななか影の中から出てきたセブルスが口を挟んだ。
「校長、一言よろしいですかな。ポッターもその仲間も、単に間が悪くその場に居合わせただけかもしれませんな。...とはいえ、一連の疑わしい状況が存在します。だいたい連中はなぜこの廊下にいたのか?なぜ3人はハロウィーンパーティーにいなかったのか?」
おそらくこの3人というのは私を除いた3人のことだろう。私はハロウィーンパーティーに出ていたのだから。ハリー達はセブルスの突き詰めるような問いに対して一斉に絶命日パーティーの事を説明しだした。しかしそれを聞いて、なおもセブルスの問いは止まらない。
「では何故その後大広間に戻らずこの廊下に行ったのかね?ゴーストの宴でお前達のような生きた人間にふさわしい食事がでるとは思えんが。夕食も食べずに空腹で早々と就寝したかったのかね?」
ハリー達は顔を見合わせる。