第26章 空飛ぶ車
私はキングスクロス駅に来ていた。いよいよ、新学期が始まるのだ。ディニーにここまで連れてきてもらい、コンパートメントを取ってからお父さまとお母さまといつもと同じように話していた。そろそろ汽車が出発する時間になるとお父さまは私に向かってこう言った。
「いいかい、ユウミ。危険なことに首を突っ込まないこと。今年度は無事に何事もなく帰ってくると願っているよ」
『はい、お父さま』
お父さまは私を心配そうに見つめ、真剣な表情でそう言った。お母さまも私を心配そうに見つめている。二人には申し訳ないのだが、もしかしたら今年も危ないことになるかもしれない。死人は出ないが、相手はあのリドルだ。十分ありえる。嘘をつくことに罪悪感を感じながらも、頷いて答えた。
お父さまとお母さまと挨拶を交わしてから、取っておいたコンパートメントに入る。するとちょうど出発したので、お父さまとお母さまに手を振った。二人が見えなくなって読書をしていると扉がノックされる。
『はい』
「やっと見つけたわ!」
『クレア!』
「私たちも〜いるよ〜」
ドアが開き、入ってきたのはクレアだった。それに続いてひょっこりと顔を見せたのはエイミーとミアだ。荷物を上げてから、クレアが私の隣に座りエイミーとミアが正面に腰をかけた。
『あのときぶりよね?』
「そうね」
「見たよ〜あとあと〜大変だったんだね〜」
4人で、ダイアゴン横丁で会ったことを話していた。エイミーが言っているのは、アーサーさんとルシウスさんの喧嘩のことだろう。ロックハートが記事にするように言っていたのだ。そこから色々な話をしていると、なんだか廊下がざわざわとしている。様子を見てくると入り口側にいたクレアとミアが出ていく。
『なにかしらね?』
「なんだろうね〜」
戻ってきたクレアとミアによると、窓の外に青いフォード・アングリアが飛んでいるのを見たという人が複数いてそれでざわざわしているらしい。それを聞いてすぐに私はハリーとロンだと思った。前世の記憶通りにことは進んでいるみたいだ。
「本当なのかな」
「でも、法律的には大丈夫なのかしら?」
「見間違いだよ〜」
クレアとミアはエイミーの意見に納得したようで頷きあっている。しかし、残念ながら見間違いではない。そんなことを言えるわけもなく、私は曖昧に笑った。