第3章 新しい世界
洋服に着替えた私は、2階にある自分の部屋を出て、1階にあるリビングに向かった。
『おはようございます、お父さま』
扉をあけると、テーブルには新聞を読みながらコーヒーを飲んでいるお父さまがいた。私の声に気づいたのかこちらを向き新聞を置いたお父さまは、席を立ち上がりこちらにきて軽くハグをしながら挨拶を交わす。
「ユウミ、おはよう。今日の体調はどうだい?」
私はあのときエイルが言ったとおり、心臓が悪く体が弱かった。しかし、私の両親は前世の両親とは違い、私のことをとても愛して心配してくれていた。このやりとりも毎朝のことだ。でも心配してくれてるのが伝わり、不謹慎だがとても嬉しかった。
『今日も体調はバッチリよ、お父さま。大丈夫よ』
私が笑顔で答えるとお父さまはにっこり笑ってくれて席に座るよう促してくれたので、席についた。席につくと目の前にはいつもより豪華な食事があった。
『...?お父さま、今日はなにかあるのかしら?』
首をかしげながら正面のお父さまに聞くと、返事は違うところから返ってきた。
「あら、ユウミ。今日はあなたの11歳のお誕生日でしょう?忘れちゃったのかしら?」
キッチンの方から、にこやかな表情のお母さまが出て来て私の疑問に答えてくれた。
『そうだわ!忘れてたわ』
そう、なにを隠そう今日は11歳の誕生日である。すなわち、あの有名なホグワーツからの手紙が届く日なのだ。私に魔力があればの話だが。
『お父さま、お母さま、私には魔法を使うことはできるのかしら?』
あの憧れのホグワーツからの手紙を楽しみだが、自分に魔力があるのかとても心配だった。お父さまもお母さまも、ホグワーツで学んだので私もそこで学びたいと考えていたからだ。だが、私には幼い子特有の暴走というものがなかった。だから心配のあまり思わず、言ってしまった。お父さまとお母さまは顔を見合わせると、お母さまがこちらに近づいてきてゆっくり抱き締めてくれた。
「大丈夫よ、ユウミ。あなたが魔法を使えても使えなくてもあなたは私たちの大切な大切な娘なのだから」
安心した私はお母さまをゆっくり抱き締め返した。
『ありがとう、お父さま、お母さま』