第3章 浅葱色の哀愁
「そうだな…戦場で持ち主は色々と変わっていったが…有名なところだと織田信長だな」
「おっ、織田信長…!?」
歴史を習えば誰もが聞きたことがあるであろう名が飛び出してきた
あの織田信長と関わった刀が今目の前にいるんだ…
「なぁに、珍しいもんじゃない
俺以外に他にもいろんな奴がいたぜ
直臣じゃない者に下げ渡された刀、天下人の象徴として在った刀、反対に愛された刀もいたな」
遥か昔を懐かしむかのように薬研は開け放たれた襖の先の空を見つめる
薬研にも、まだここにいない刀に知己がいるんだ
「二振り目…宗三兄さまのこと?」
「そうだ、あぁ…小夜は弟だったな
あの時代の兄貴の話知りたいか?」
「聞く」
縁側に座り込み話し出す二人
あの小夜が、兄の話を聞いているときは少し目を輝かせているようにもみえる
二人の先の外から差し込んでくる日の光がやけに眩しく、そろそろ正午に差し掛かることに気づいた
「そろそろ来るかな」
午前から史料を集めてもらっている堀川
一つ足りないから清光に聞いてくると出て行ってからしばらく経っている
もう見つけた頃合いだろうかと予期したとき、ちょうど彼はやってきた
「書庫にありましたよ、主さん」
「書庫だったかぁ…大変だったよね?」
「いえ、加州さんも手伝ってくれたので」