第3章 浅葱色の哀愁
小夜とはそのまますれ違い、俺たちも再び歩き出した
「あーぁ、馬当番でさえ羨ましくなってきたよ
布団から出れないと体もなまっちゃうよ」
「なんですか、その目、何か言いたげですね」
「なんも言ってないよ」
「そういえば加州さん、陸奥守さんのお部屋はどうでしたか?」
「げっ」
ニコニコ笑っているけど、その場にピリッとした空気が流れたのは誰が見てもわかるだろう
「見つかる前に帰ったのに…なんでバレたんだよ」
「こう見えても僕、鼻がきくんですよ」
「本気かよ…おっそろしいやつ…」
「さ、着きましたよ」
何事もなかったように堀川は書庫の扉をあけて入っていく
こいつには敵わないかもしれない…
「えーっと…必要なのは安土桃山時代の情勢史料だから…」
「それは年代別に並んでるはずだから、だいたいこの辺りじゃない?」
「あっ、本当だ、ありました!
よしよし、これで資料は全て揃ったんですけど…個人的に探したい本があるので少し待っててもらってもいいですか?」
「ん、いいよー」
政府から与えられた本丸の書庫だけあって、ここの本の所蔵数は多い
部屋中の本棚の上から下までびっしりだ
堀川が必要だと言って本を抜いたあたりの史料を眺めていると、ある一つの本に目がとまった