第3章 浅葱色の哀愁
「あれ、おかしいな…記憶違いだったかも」
「あるとすれば書庫かな…見てきます」
「俺もいくよ、二人で探した方が早いでしょ」
すると堀川はジロリと俺を睨んだ
言われなくても分かる、安静にしろってね
だけど、ここ数日の書物整理で書庫の史料の多さを知っているからか、フッとその目つきが緩んだ
「じゃあ、お願いしましょうか
ここに来ると助手の僕が手伝われることもあるんだなぁ」
「よーし、そうと決まれば行こ行こっ」
やっぱ近侍の仕事に少しでも関われるとなると心がおどる
なんたって主の役に立てるんだから
堀川と二人で書庫へ向かう途中に、内番服を汚した小夜と出会った
「あれ、小夜さん?
どうしたんですか? 暗い顔して…少し服が汚れてるし…」
「…馬当番だったんだけど…馬が突然暴れだすから汚れちゃった
馬が僕に怯えていた、動物にはわかるんだ
僕に馬当番は向いてないよ」
小夜は過去の経験からか復讐にこだわり、自分を卑下するような言動もある
だけど、馬が暴れたのは多分小夜のせいじゃなくて、さっき馬当番に行った自由なあいつの気風にあてられただけではないかなんて思ったりする…
「馬も機嫌が悪い時くらいあるんじゃない?
早く着替えておいで」
「うん…わかった」