第3章 浅葱色の哀愁
陸奥守はどこか懐かしげな表情で拳銃を見つめながら話す
そしてその拳銃を胸元にしまうと、すっと立ち上がり大きく伸びをした
「さぁて、そろそろ馬当番のはずじゃ」
「あ、そうだったんだ」
「がははは、刀が馬当番! まっこと斬新ぜよ!」
陸奥守は豪快に笑いながら部屋の襖をスパーンと開けて出ていった
「ちょっとー…客人置いてくとかある?」
まさしく自由奔放って感じだ
1人残された陸奥守の部屋を見回すと、世界地図やら船の模型やらがいっぱい
いつのまにこれだけ持ち込んだのか…
「世界をつかむ…ねぇ」
武器としての刀が消えようとしていた時代
俺たちの存在意義が問われた幕末
その時、変わりゆく世界はどんな様子だったのだろう
時代の流れなんて、どうやったって変えられるわけないのに
どうして、抗う人がいたのだろうか___
まぁ、あまりジロジロ見ても悪いから、出ていくとしようか
隣の自分の部屋の布団に戻ったと同時に、襖が開き堀川が入ってきた
「あっぶね、間に合った」
「なんですか?」
「いーや、なんでもない」
堀川は俺の目の前に屈み込み、俺が渡した主の仕事に必要な書物の名簿の一つの欄を指差しこちらを見た
「加州さん、この時代の史料は主さんのお部屋の本棚にはありませんでしたよ?」