第3章 浅葱色の哀愁
「これが気になるか?」
「うん」
「これはわしの気に入りの拳銃ぜよ」
そう言って片手でスッとかまえて撃つようなそぶりを見せる
「銃兵が持ってる火縄銃とかより小さめだね…持ち運びしやすそう
それに片手で打てるんだ」
「おんしゃあよお分かっちゅう!
それが拳銃のええとこじゃ」
「でも…なんで陸奥守がそんなものを持ってんの?
俺たちは刀剣男士…刀なのに」
専ら接近戦で扱われる俺たち刀と、多少距離があっても攻撃できる拳銃とでは武器としての性質が全く異なる
どうして刀である陸奥守が拳銃を手にするのか俺には分からなかった
「わし自身、土佐じゃー名刀として評判やったがやけど…龍馬の時代じゃ、もう刀は時代遅れじゃった」
「時代遅れ…?」
「そうじゃ
龍馬の生きた幕末には、西洋からこじゃんと新しい武器がやってきちょった
主役は刀じゃのうて銃じゃった」
陸奥守は手元の拳銃を磨きながらそう語る
俺はその場にいたわけじゃないから分からないけれど、幕末は世の中が変わろうとしていた時代のようだ
刀が必要とされなくなるなんて、俺たち刀剣にとっては悲しいこと
それなのに陸奥守は「時代」のせいだとわり切っている
どうしてそう考えられるのだろう?