第3章 浅葱色の哀愁
「まぁせっかくこがな所に来たがやき、世界を掴むぜよ!」
「ふーん…また個性の強いやつが増えたね
俺は加州清光、俺以外の打刀は初めてだから歓迎するよ
よろしくー」
「加州か、こっちこそよろしく頼むぜよ
おんしゃは?」
「僕は堀川国広…新選組の土方歳三の脇差でした」
新選組という言葉に陸奥守さんは少し目を見開く
当然の反応だ
倒幕派の坂本龍馬と佐幕派の新選組、僕達の元主はいわば敵対関係だった
それぞれの刀が今になって主を同じくして相見えるなんて、あの頃は考えられなかったな
「…まっこと不思議な巡り合わせぜよ
けんど、これも何かの縁じゃろうなあ」
「そうですね…よろしくお願いします」
今は同じ主のもとにいるのだから前の主人同士の因縁は持ち込むべきではない
主のもとで僕らが背負っている使命を考慮すればそれは自明なことなんだ
だから僕も陸奥守さんも、この先きっと私情を持ち込むことはないと思う
それでも、自分の中の複雑なこの感情を押し殺すことはできない
僕が土方さんに使われたことは、僕を成り立たせるものの一部だ
もしかしたら、そう思いたいという僕のエゴなのかもしれないけれど
そんなことを僕が考えてるなんて知る由もなく、加州くんは僕と陸奥守さんのやりとりを訳がわからないという様子で見ていた