第3章 浅葱色の哀愁
1人は艶やかな黒髪にキリッとした顔立ちで美少年と呼ぶのが相応しいくらい綺麗な眼鏡の男の子
もう1人は加州くんよりも背が高くって、柔らかそうな癖っ毛と朗らかな笑顔が印象的な青年
もちろんこの本丸では見たことがない人達だから「知らない」と首を振って加州くんに伝えると、男の子の方が口を開いた
「あんたが加州清光か?」
「そうだけど」
「なら丁度いい、大将から古株のあんたのとこに挨拶に行って来いと言われてな
俺は薬研藤四郎だ」
「藤四郎…ってことは粟田口ですか?」
「あぁ
名前はこうだが兄弟たちと違って、俺は戦場育ちでな、戦場じゃ頼りにしてくれていいぜ
この本丸には既に粟田口派がいるみたいだし…兄弟ともども、よろしく頼む」
軽くお辞儀をしてそう自己紹介した彼は、見た目とは裏腹にしっかりとした口調で確かに頼りになりそうだ
薬研さんは次は兄弟に会って来ると言って一足先に去っていった
その姿が見えなくなると同時に、もう1人の青年が話しだす
「わしとあいつはこの本丸のやつらが遠征しちゅう時に出会ったんじゃ
紹介が遅れた、わしは打刀、陸奥守吉行じゃ」
陸奥守吉行…聞いたことのある名前だ
何よりこの口調は…
「もしかして坂本…?」
「そうそう、坂本龍馬の佩刀として知られちゅうね」