第3章 浅葱色の哀愁
加州くんは僕の手元の書類に目を落とし、不備を指摘してくれる
…今の加州くんにとって新選組は「たくさんある任務の中で関わってきた組織の一つ」くらいの認識で
特別に興味を惹かれるわけでもないからその話はまたの機会でもいいし、彼にとって大切なのは今目の前にある近侍の仕事
記憶が無いのだから仕方がない事だと分かっているけど、僕と加州くんの間にははっきりとした隔たりがある
それを目の当たりにして、哀しさとも淋しさともつかない感情が胸を支配する
「ん、これでいいんじゃない
さっき小夜が当番表探してたから渡してくる」
「それなら僕が行きますよ」
「いーや、これくらい俺にさせてよね!」
「あっ、加州さん! 走っちゃ駄目だってあれほど!」
僕から当番表を取り上げて完治していない体で廊下を駆けていくものだから、急いで追いかける
加州くんはとにかく足が速いから、この展開になるとだいたいいつも逃げられてしまう
だけど今日はいつもと違った
加州くんが廊下の曲がり角の手前で急に止まるものだから、僕はその背中にぶつかってしまった
「っと! 急に止まってどうしたの…って?」
「堀川、この人達知ってる?」
加州くんが曲がろうとした角の先には二つの人影があった