第3章 浅葱色の哀愁
こんなに美味しいのはきっと加州くんが淹れてくれたからだろう
「誰かに何かをしてもらうのってこんなに嬉しいんだね」
「急にどーしたの」
「いやぁ…僕は兼さんの面倒を見ることはよくあったけど、世話を焼かれることはあまりなかったからなんだか新鮮だなって」
「…その『兼さん』ってよくお前の口から聞くけど、誰?」
ふざけて言ってるわけじゃない、本当に「知らない」というその顔
やっぱり兼さんのことも忘れちゃったんだね…
加州くんに兼さんのことを説明するなんてとても変な気分
「『兼さん』は和泉守兼定っていう打刀のこと
前の持ち主が同じで僕の相棒なんだ」
「前の持ち主っていうのは?」
「…土方歳三、新選組っていう組織の副長だった人だよ」
「新選組…!」
僕の言葉に目を見開いて反応する加州くん
もしかして、思い出してくれたのだろうか
淡い期待を抱いたのに、現実はそう簡単にもいかないみたい
次に続いた加州くんの言葉はそれを裏切るものだった
「その名前なら前に任務で聞いたことがある、確か初めて出陣した時だったかな
堀川とその兼さんって刀はその組織にゆかりがあったんだね」
「う…ん、そうだよ」
「今後の任務の役に立つかもしれないし、また話聞かせてよ
あ、ところでこの当番表なんだけどさ_____」