第3章 浅葱色の哀愁
そうだ…僕は加州くんから引き継いだ近侍の仕事をしていた最中だったのに
仕事に慣れて油断してしまったのか、うっかり机に突っ伏して眠っていたらしい
「近侍の仕事、きついなら俺がするけど」
加州くんはニヤリとしながら頬杖をつく
僕から仕事を取り返すいい機会だと言わんばかりの表情だ
「大丈夫、もう寝ませんから!」
「ふーん…ま、代わりたくなったらいつでも言ってよね
あとそれ、堀川の分」
加州くんが指差す方向に顔を向けるとふんわりと心地よい香りがする
そこにあったのは淹れたてで温かそうなお茶と和菓子
「これ、加州さんが!?
言ってくれたら僕が淹れに行ったのに…安静にしてなきゃ駄目だって…」
「寝てたやつが何言ってんの
それに近侍が堀川に変わってから1週間だよ、いい加減動けるし」
「でも…」
「堀川に代わってもらってる仕事に比べたらこれぐらい大したことないって
疲れたでしょ、少し休憩」
要するに、僕を労ってくれたみたいだ
仕事を取られたのは不本意なはずなのに、その僕にも気を配ってくれる律儀なところはとても加州くんらしい
「ありがとう、じゃあいただきます」
「どうぞー」
居住まいを正してお茶をいただく
口の中に広がるほろ苦さと茶菓子の甘さが疲れた体に心地よい