第3章 浅葱色の哀愁
(堀川side)
主さんから聞いていたはずなのに
「…誰?」
いざ目の前でそう言われると、僕の中で何かがちくりと痛んだ
でも、襖の先にいたその姿は昔と何も変わらなくて…とても嬉しかったな
「俺はこの本丸の初期刀の打刀、加州清光」
知ってるよ、さっき主さんから聞いたから
「元々は貧しい環境で生まれた川の下の子で」
知ってる、昔聞いたもんね
「扱いづらいけど性能はいい感じ…って、どうしたの?」
言われて初めて自分が一言一言に反応していたことに気がついた
君があまりにも変わらない様子で話すから、遥か遠い過去に遡ったかのような錯覚に陥っていたんだ
こんなにも懐かしいのに
「俺のことは好きに呼んでくれていいから」
「うん、じゃあ加州く……加州さんって呼ばせてもらいます」
昔のようには呼べなかったのは、どうしてかな
「__かわ」
僕の名を呼ぶその声は
「ほりかわ」
全く同じなのに__________
「ほーりーかーわー!!」
「わぁっ!?」
突然その声は大きくなった
直後に耳が痺れたから、耳元で呼ばれたんだと気づく
目の前には加州くんがいるけど、この状況は…
「えっ…と…僕?」
「今、寝てたでしょ?」