第3章 浅葱色の哀愁
(清光side)
「加州、何かあれば遠慮なく呼んでくれ」
「ゆっくりやすんでくださいね!」
骨喰達が出て行った部屋は途端に静かになった
いつも通りの自分の部屋なのになんだか少し寂しくて、それを誤魔化すかのようにある事を思いつく
「爪紅、塗ろうかな…」
俺はあの出陣以来、1週間近く眠ったままだったらしい
そのせいか、ここに来て以来しっかり手入れしてきたはずの爪先がすっかりボロボロになってしまっていた
この爪は、主と初めて出会った日の大切な思い出だ
主は俺にとって特別
俺が眠っている間ずっとそばにいてくれたみたいだし、さっきも俺は弱くないと伝えてくれた
俺は刀、人に扱われて真価を発揮する「物」
主は今まで誰にも扱われたことがない俺を使ってくれて大切にしてくれる唯一の人だから
俺は、もっと主の役に立ちたい
もっと、もっと、主に必要とされたい、愛してほしい
そう思うのは、ただの「物」にしては欲深いのだろうか________
「…これでよしっと」
全ての指に塗り終わりあとちょっとで乾ききるかというところで、部屋の外から声がかかった
「すみません、入ってもいいですか?」
静かな空間に凛と響き渡ったその声は聞き覚えがないものだ