第3章 浅葱色の哀愁
再び歩き始めながら考えていると、台所の前を通った時に中から話し声が聞こえた
「うーん、包丁って思ったより使いにくいね
脇差と同じ刃物なのになあ」
「空いている手…そのままだと危ない
猫の手にするんだと秋田が言っていた」
覗いた先にいたのは、小夜左文字とこの前出会った堀川国広
どうやら入ったばかりの堀川に料理を教えているらしく、小夜が手を軽く握って見せていた
「なるほど、これなら手を切らないってわけか…っと主さん!
加州くん目を覚ましましたか?」
「…うん」
「良かったぁ! お部屋行っても大丈夫ですかね?」
「あの、その前に…」
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「自己紹介がまだでしたよね
僕は堀川国広と言って、和泉守兼定と一緒に、土方歳三が使っていた脇差です」
私の部屋で目の前に座った堀川国広は手短にそう語った
出会ったあの日は清光の怪我のことで手一杯で、きちんと話をしたのは今日が初めてだ
「土方歳三…新選組の副長だった人だね」
「はい
僕が本物の国広かどうかは意見が別れるところだけど、少なくとも兼さん……兼定の相棒で、土方に使われていたことだけは、本当です」