第3章 浅葱色の哀愁
縁側にさしかかった時、畑の中で屈む小さな背中が見えた
「あれは…前田?」
「あ! 主君!」
こちらに気づくと、泥を払って駆け寄ってくる
その腕の中にはたくさんの瑞々しい苺
後ろに続いて走ってきたのは探していたこんのすけだ
「こんのすけ、ここにいたの!」
「おや、私をお探しでしたか?」
「えっと、その苺は?」
「加州さんが目を覚ましたと聞いたので、お見舞いに食べ頃の甘い苺をと思いまして、こんのすけと共に収穫していました
僕、お部屋に行ってきますね!」
私が今来た道をマントをはためかせながら前田が歩いていく
苺のほのかな甘い香りがまだ鼻孔をくすぐる中、こんのすけがこちらを見上げて問う
「主様、私に御用でしたか?」
「一つ聞きたいことがあって」
「何でしょう」
「あのね…本丸の中で鍛刀して刀剣男士を顕現させたいの
何か方法は無いかな」
口にはしなくても、他の刀剣達にも今剣のように待ち望む相手がいるはず
それに今のままの進軍先で仲間を増やす方法では、みんなの負担が大きすぎる
私も何か手伝えればと思ったけれど…
こんのすけの表情を見れば、難しいことを言っているのは分かった