第2章 一人、また一人
感覚で覚えていても記憶にはなく、それを自覚しないからただ違和感を覚えるだけで
それがどれだけ心地悪くもどかしいものか
清光の表情がそれを物語っていた
「加州さん? さきにすすまないんですか?」
「え、あぁ…行こうか」
今剣に声をかけられた清光は、納得がいかない様子だったけれど切り替えることにしたらしい
顔つきは隊長のものに戻っていた
そして再び奥へと進み出す
「あそこ! いままでよりふすまがおおきいですよ!」
「多分この屋敷の大広間だね…清光、索敵お願い」
「ん、了解」
僅かに開いたふすまの隙間から清光が中の様子を伺う
「一、二、三……八…か」
「さすがに二人だけじゃ厳しいかな…」
「まともに相手したなら、ね
でもまあ、これだけ戦力差があるなら正面からぶつかるなんて得策じゃない
こーゆー時は___」
「きしゅうですね!」
恐らく清光が提案しようとした戦術は、目を輝かせた今剣が言ったものと同じ
「まぁそうなるね」
「ぼくのまえのあるじさまがとくいだったせんじゅつです
きしゅうならまかせてください」
「奇襲か…具体的にはどうするの?」
「…敵は八振りともこの襖とは反対側の壁際にいる
両側にも襖はあるけど、奇襲するとなったら…上かな」