第2章 一人、また一人
「その傷があってもあんたがある程度動けることは俺たちも分かる
だがここは戦場だ、いつどのように形勢が傾くか分からない」
「…はい、でも…」
「でもじゃない、あんたのそれは我儘だ
万が一折れたら元も子もないだろう」
今剣はそのまま押し黙ってしまったけれど、瞳からは涙が溢れでていた
そんな様子を見ると、帰城命令を出すのが躊躇われる
それに今日は政府からの試験任務だ
多少の無理をしてでも帰城せずに進軍して良い成績を残し、この本丸の運営を認めてもらわなければいけない
だけど骨喰が言うことももっともで、今剣が折れてしまうところなんて見たくない
一番避けなければならない事態だ
やっぱりここは帰城するしか___
「ねぇ、主」
その声が、判断を下そうとした私の思考を止めた
「…清光」
「このまま、進軍させてほしい」
「加州!」
「骨喰ごめん、お前の言うことが正しいと思う
正しいけど…進ませて
お願い、主」
清光の真紅の瞳が揺らぎなく私を見つめる
私にこんなに頼み込んでくること、今までなかった
まさか清光にも頼まれるとは思ってなかった
真っ先に止めてくるものかと
進軍する不安がなくなったわけじゃないけど
清光がそう言うなら、大丈夫
そう信じたいと思った