第2章 一人、また一人
「わがままだってことはわかってます…わかってるんですけど…!
ぼくは…はやく岩融にあいたい
そのためにはもっと、もっとつよくならなきゃいけないんです!」
「あっ、今剣!」
そう言い残して今剣は稽古場から出て行ってしまった
追いかけようとしたと同時に、骨喰の手が俺の腕を掴む
「…今はそっとしておいた方がいいだろう」
「でも…っ」
「現状では、今剣の願いが叶うにはまだ相当な時間がかかる
そしてそれは今剣自身がよく分かっているはずだ
俺たちがこれ以上かけてやれる言葉はない」
「そんな…!」
「だが、強くなりたいという思いには応えてやれるはずだ
頼まれれば稽古だって付き合ってやれるし、一緒に出陣すれば経験だって積める」
「…」
「だから、今は気持ちを落ち着かせるべきだ」
その言葉は今剣だけでなく、俺にも向けられたように感じる
力強い骨喰の瞳の前に、俺は今剣を追いかけようとした足を止めた
「…そうだね、ごめん」
「謝る必要はない、俺だってあんたと同じ思いだからな
それに、今剣の気持ちもよく理解できる」
「え…骨喰にも同じように想う刀があるの?」
「あぁ…たくさんいる
兄も、弟たちも、それに俺と同じ脇差の兄弟もいるんだ」