第2章 一人、また一人
「頑張って今剣、いつも苗植えるの上手だよ」
「うぅ…わかりました」
「はいこれ、軍手あったよ」
「すまない、ありがとう」
骨喰は軍手を受け取ってそれをつけると、ふと地面をじっと見つめた
「どうしたの?」
「なんだろう…懐かしい気分だ
俺は…畑の匂いがする奴を、知っている」
「え?」
骨喰は眉間に皺を寄せ、自分でも不可解だと言いたげな表情を浮かべていた
その表情は以前清光が倒れた時に浮かべていたものとそっくりで…
もしかして、記憶が戻りかけてる?
じっと足元を見つめたままの骨喰に清光が声をかけた
「よく分かんないけど…畑仕事できそう?
無理なら馬当番から教えてもいいけど」
「いや…すまない、大丈夫だ
教えてほしい」
「そう? じゃあまずは…」
清光が骨喰に鍬を渡し、耕し方を教え始めた
真剣に話を聞いている骨喰は、既にいつもと同じ表情に戻っている
「こんのすけ、今のって…」
「畑の匂いがする奴、ですか
骨喰藤四郎は大火で焼ける以前に豊臣秀吉に献上されたことがあります
秀吉の出自に関しては農民の出であったと言う説がありますので、そのことかと思われます」
「豊臣…秀吉」
畑仕事の最中にそんな大事なことを思い出しかけるなんて
記憶を取り戻すきっかけは日常の中にも隠れているのかもしれない
清光もできるだけ無理のないように、穏やかに思い出すことができたらと
そう願わずにはいられなかった