第2章 一人、また一人
「ですので顕現した際に大火以前の記憶をほとんど失っているのが通例です」
「知らなかった…」
研修の時に他の本丸に行ったけれど加州清光以外の刀は見かけなかったから、審神者になりたての私は清光以外の刀はまだほとんど知らない
うちの清光以外にも、記憶を失っている刀剣男士がいるんだ
「加州殿は自覚がないとはいえ、今この本丸の刀剣三振りのうち二振りは記憶がないということになりますね」
「はは…本当だね」
「記憶がなく不安定な分、注意深く見守らないといけませんね」
「うん」
こんのすけとそう再確認したのと同時に外から声がかかる
「主ー、軍手ってまだあるかな? 骨喰の分」
「あると思うよ! 持っていくね」
畑仕事を教えるつもりなのか三人は畑の前に立っていた
予備の軍手を見つけてこんのすけと共に清光達のところへ行くと、ここ数日毎日見かけるやりとりが今日も行われていた
「加州さん! ぼくもくわをつかいたいです!」
「駄目だって言ってるでしょ
今剣には大きすぎるし、何より持たせると危なっかしくて仕方ない
俺たちが耕すから、苗を植えて」
「ちぇ…じみちなしごとはにがてなんですよう」
今剣は渋々と苗を植えだした
最近ちょっとずつだけど、今剣は清光の言うことを素直に聞き入れるようになったようだ