第2章 一人、また一人
「ていうか…はぁっ…ちゃんと当番しようか…
ここんとこ毎日お前追いかけてばっかりだ」
「それは加州さんがぼくをつかまえてくれないからじゃないですか!
ここまでのぼってきてくださいよ!
「いや、普通はそんなに軽々と木に登れないから!」
枝に座り楽しそうにこちらを見下ろすその小さな身体は息切れ一つしていない
あんなに走りまわったり跳ねたりしていたのに…
「なんなのお前…どこからそんな体力が…
ていうか身軽すぎるでしょ」
「そんなのとうぜんです!
みてのとおり、ぼくはてんぐなんですよ
とんだりはねたりおてのもの!」
「天狗ねぇ…
今剣の前の主って誰?」
「みなもとのよしつねこうです!」
「よしつね…」
「はい! ぼくはよしつねこうのまもりがたななんですよ
よしつねこうはおさないころから、くらまやまでしゅぎょうしてたんです
だからぼくにとってもりはあそびばなんです」
「ふぅん…」
前の主の影響ってわけか
鞍馬山の天狗の話は有名だから俺も知ってる気がする
言われて見れば、木々の隙間を思うがままに飛び回るその姿は天狗そのものだ
「加州さんは?」
「は?」
「だからっ!
加州さんのまえのあるじさまはだれですか?」