第4章 浅葱色の哀愁(2)
「頼まれなければ何も知らずに外していたかもしれないから良かった
それで…清光はどうだった?」
「昔のことは思い出してはもらえませんでしたし…加州さんが新選組のことをどう思ってくれたのかさえはっきりとは分からないです
少しは好感をもってくれたらいいな…
あ、でも僕の方も気づくことがあったんです」
堀川はそれまで真剣に話していたけど、少し顔を綻ばせた
「鶴丸さんの言う通りだったなぁ…
加州さんにその気はなかったんでしょうけど、とっても驚かされたんです
主さん、加州さんは全部忘れてなんかいませんよ」
曰く、清光は前の主人である沖田総司の技を無意識に使っているらしい
本人が憑依しているとさえ錯覚したと語る堀川の顔からは、嬉しさが溢れ出ている
「剣技は僕ら刀の身体に幾度にも渡って直接伝わるものです
表面上の記憶を失っても、きっと覚えているんです
加州『くん』は変わってなんかいませんでした」
初めて会った日には加州を本物かと疑い、全くの別物で知らない刀だと泣いた日の堀川の面影はもうそこにはなかった
この出陣が、加州だけでなく堀川のためにもなったみたい
「無くした記憶を取り戻すのは、今後も手伝います
何かあれば言ってくださいね」
「うん、お願いします」