第4章 浅葱色の哀愁(2)
堀川が部屋を後にして一人きりになると、本丸の中に響くみんなの声や足音が聞こえた
帰還後だからみんな片付けで少しバタバタしているようで、私の部屋の前にも何人かが通り過ぎる
その中に清光の姿が見当たらない
「何してるのかな…
あ、ねえ、清光がどこにいるか知ってる?」
「主君! 加州さんならお部屋でお休みですよ」
廊下ですれ違った秋田藤四郎に教えてもらった通り部屋に行くと、そこに清光はいた
慣れた手つきで手甲を外す彼の髪はいつもより乱れて、コートは少し汚れてしまっている
「あっ、主!
待って、まだみっともない格好してるから…」
急いで襖を閉めようとする清光の手を私も慌てて止めた
「ううん、それだけ頑張ってくれたってことでしょ!」
「一刻待って、可愛くするから」
「いっ、一刻…!?
そんな時間かけなくても、清光はいつでも可愛いくてかっこいいよ」
「うっ、そう言ってくれるのは嬉しいけど…」
しばらくの間、清光の顔に葛藤が見てとれたけど
「はぁ…仕方ないな
こんなボロボロじゃ愛されっこないから、着替えてから会いに行こうと思ったのに」
襖にかけていた手の力を抜いて、中に入れてくれた
「そんな気にしなくてもいいのに…」
「俺が気にするの」
コートを壁にかけながら、不服そうに頬を膨らますのが可愛らしい