第4章 浅葱色の哀愁(2)
敵を、三度にわたって、加州清光は力強く貫いた
敵は微動だにせず、今にも飛びかからんその体制のままだ
そして、動けなくなったのは敵だけではない
「沖田…さん?」
僕の目がおかしくなったのか
目の前の光景に、在りし日のあの人の姿が重なる
僕の体は電流が走ったかのように痺れ、動くことすらできなかった
目にも留まらぬ速さで繰り出す三段突き
まるで一つの突きかのように錯覚すらさせる、沖田さんが得意だった天然理心流の突き技だ
どうして…? 忘れているはずじゃ…
「ふぅ…今ので最後かな、あとは二人を待とう」
加州くんが刀を戻しながらかけたその声で、僕の意識から遥か昔の日々が消え去った
「加州さん…今の突きは…」
「ん? あーこれね、骨喰にも褒められたよ
なんだか自然と出るんだよね、得意技っていうの?」
他愛も無いことのように話しているけど、本来は簡単にできる技ではない
あれを無意識で…?
いや、加州くんの身体は覚えているのか___
「あ、二人とも帰ってきたみたい
帰ろう……って、堀川? どうしたの?」
もしかしたら、全くは忘れていないのかもしれない
そんな可能性が頭をよぎった