第4章 浅葱色の哀愁(2)
(堀川side)
「うーん、見失っちゃったかな」
敵の逃げ足が想像より速かったのは誤算だった
先に駆け出した鶴丸さん達はまだ追いかけているようだけど、僕達は二手の道を前に立ち止まってしまった
「どっちに向かったんだろう」
「ごめん堀川、俺が呼び止めたから」
「加州さんのせいじゃありませんよ
僕もさっきの戦いで思ったより消耗してたみたいです」
彼らの姿は見えなくなったけれども、地形を考慮すればこの二手の道は行き着く先が大きく違うはずだ
一方は両軍から大きく離れてしまう方角だから…
「きっとこっちです、行きましょう」
「あぁ、地理的に考えればそっちかもね」
再び肩を並べて二人で走り出す
記憶がない状態ではあるけれど、新選組にゆかりがあるもの同士で戦地を駆けるなんてなんだか感慨深い
横顔だけ見れば昔と何も変わらない、記憶がないなんて嘘のようだ
「ん、どうしたの
俺の顔、返り血でも付いてる?」
「い、いいえ、何でもないです
あ、そういえばさっき何か言いかけてましたよね?」
誤魔化すために咄嗟に出した問いかけは、実は大方察しはついている
記憶を失っているとはいえ、彼の中にはあの剣筋が染み付いているはずだから
「あー…大したことじゃないんだけどさ…」