第1章 出逢い
手拭いを受け取ろうと手を伸ばすと、清光の手がパシッと私の手を掴んだ
「ん? どうしたの?」
「主の指のこれ、綺麗」
「これ…? あぁ、爪紅だよ
清光も塗る?」
「いいの? じゃあ塗りたい」
そして清光は爪紅を塗り始め、私は清光の髪を拭いた
初めてだというのに清光は器用に塗り、その横顔はとても楽しそうで…
やっぱり、記憶がなくても、オシャレが好きな加州清光であることには変わりがないんだ
「はい、髪乾いたよ」
「俺も塗り終わった」
「じゃあ爪紅が乾くのを待つ間に、髪結ってあげる」
清光の艶やかな髪を櫛で丁寧にとかし、長い襟足を結ってあげた
そして清光を私の方へ向き直らせる
「うん、可愛いよ」
「かわ…いい…?」
すると清光は頬を薄っすらと赤く染め、照れたように笑った
それはこの本丸にきて、初めて見せてくれた笑顔だった
「へへっ…ありがとう」
「気に入ったもらえた?」
「うん
…ねぇ、主」
「なに?」
「俺、もっともっと可愛くなるから
主のために強くなるから
だから、俺のこと大事にしてね?」
「うん、もちろ____」
返事をしようとして、さっきの言葉が頭をよぎる
『加州清光を刀解せよとのことです』