第2章 理想の夢を見る方法。
聞こえた方へおずおずと近付く。音を探すように視線を彷徨わせていると視界の端で何かがチカと光った。気になってその光へと近付くと銀字の背表紙が光っていたようだった。それを手に取りタイトルを見る。
「…理想の夢を見る方法…?」
あまりの馬鹿げたタイトルに思わず口に出して読んでしまった。理想の夢が簡単に見られるならみんな実践しているだろう。パラパラとページを捲ってみると、途中に読み込まれた跡が付いたページを見付けた。内容はその実践方法らしい。自分より前に借りた人たちはこのページを他よりも読み込んだのか。小さく笑う。
こんな方法を試しても理想の夢なんて見られるはずない。頭の中ではわかっているのに、何かが引っかかる。それは好奇心なのか、この現実から逃げ出したい心の叫びか。本を閉じてしばらく本を見つめる。
「…信じるわけじゃなくて、たまには見たことないジャンルもいいかなって…」
言い訳を一人ごちる。こんな本を借りたと知られればそれを理由に苛められるだろうか。数秒考えた後、かばんにそっと本を忍ばせた。こんな奥にある本が無くなったところですぐにはバレないだろう。数日借りて、また戻せばいい。自分に言い聞かせるように頭の中で呟いて、図書室を後にした。