第2章 理想の夢を見る方法。
図書室が唯一の逃げ場だった。親に迷惑を掛けまいと学校を休むことも出来ず、教室にいるといつ苛められるのかと不安でいっぱいになる。初めは保健室に通っていたが今では厄介払いされるばかり。そんなときに見つけたのが図書室だった。時計の秒針の音と紙が捲れる音。どれもが心地好い静寂の中の五月蠅さだ。
ふと読んでいた本から視線を上げ、眼鏡を外し数回目を擦ってから眼鏡を掛け直す。ついでに時計へと視線をずらすと短針は5時を指していた。もうこんな時間かと、読み掛けの本に栞を挟みゆっくりと閉じる。持ってきていたかばんへとその本を入れるとかばんを肩に掛け椅子を収めた。帰りたくない。そんな気持ちが溜息となって漏れ、静寂の中に溶ける。
「---、」
何かが聞こえた気がして図書室の奥へと視線を向けた。ここには誰もいなかったはず。じゃあ気のせいだろうか。しばらくその場でじっとしていてもやはり何も聞こえない。疲れているんだろうかと自重気味な笑みが零れた。視線をとびらへと戻し一歩足を進めた。
「---、」
まただ。また図書室の奥から何かが聞こえた。人の声なのか、何かの物音なのか。それはわからない。でも確実に何か聞こえた。