第4章 危機感 ☆
「は、ぁッ…ンンッ…」
短い口づけではなく時間をかけてじっくりと唇を堪能する石切丸さんに私はいつの間にか抵抗という抵抗をしなくなっていた。
くらくらする……。
長々と続けられている口づけには脳さえ溶かしてしまうような甘く危険なものを感じられた。
石切丸「はッ……熱いね」
身を起こし髪をかきあげる彼は美しい。
美しいからこそ見ていられなくて目をそらすと耳に衣擦れの音が聞こえ、私の身体は強張った。
大人は怖い。
それは本当に思う。
石切丸さんだって大人、なんだ。
怖い、と思わなきゃいけないのにそう思えない。
あぁ……違う。
私は大人が怖いんじゃなくて……
石切丸「主、力を抜いて……」
現世にいた、私を虐げる人達が……怖かっただけなんだ。
「んッ……」
襟の部分を引かれると首筋が露になる。
そこからひんやりとした指の感触を感じて小さく身体が反応してしまった。
首筋を撫でる指が少しくすぐったくて小さく声が漏れると石切丸さんは何か堪えているかのような少し辛そうな表情を見せたがそれも一瞬であった。
石切丸「っ……あぁ、歯形がくっきり残っているね……」
「小狐丸さんに……噛まれた、から」
石切丸「あぁ、だからか……じゃあ私も一つ、証を残しておこう」
そう言って石切丸さんの唇の感触を首筋に感じ、吸い上げられれば軽いチクリとした痛みを感じた。
噛まれた、わけではない。
証を、残された痛み……なんだ。