第4章 危機感 ☆
「否定、できそうにありません」
声は出そうと思えば出せていたし本当に嫌だったなら暴れることで誰かが気づいていたかもしれない。
それを私はしなかった。
いまだって石切丸さんと二人きりではあるが襖の向こうにも誰かしら歩いているのがわかるので大声で助けを求めれば誰かが入ってきて助けてくれそうなものだ。
でも、私はそれができない。
「期待とか……そういうのはしてない、と思います…多分」
石切丸「多分とは曖昧な返事だね。自分のことがわからないのならさっきのできごとには期待をしていたかもしれないね」
「それは……」
自分のことなのにわからないとか、ほとんど逃げてるような回答だ。
納得してくれたように見えないのは仕方がないのかな。
困ったように笑いながら石切丸さんを見ると、何故だろう。
なんだかすごく懐かしい感じがする。それが何なのかわからずもやもやしてしまうが、今はそんなことを考えている場合でもないだろう。
「石切丸さん……」
妖しく光る石切丸さんの瞳を見ていると変な気分になりそうになる。
絡み付くようなそんな視線から逃れたくて私は顔をそらしてみるがそれもすぐ石切丸さんの手によって戻されると感じた唇の温もり。
「んッ…ッ…!」
流されてばかりはダメだと自分の精一杯ともいえる力で肩を押してみるがびくともしない。
力も入りづらいのもあるのだろうが成人男性を自分の上から退かそうとするなんて無理があることだ。
私が頑張っているうちにも石切丸さんは舌を深く挿し込み、弄ぶように……まるで味わうかのように口内を舐め回す。
そして、霊力が抜けていくようにまた目眩を感じると力が抜けていった。