第1章 始
「あった、あったー!えっとなつみさん……あなたは審神者に選ばれました!」
何を見つけたかと思えば、たった一枚の紙切れだった。
くしゃくしゃ具合から見ると全然重要なものには見えないな。
「いや、ちょっと待って。はにわ?土色の…なんか可愛いあれのことですか?」
「それは、はにわ、自分が言ってるんは審神者です」
「さに、わ?なんですかそれ」
「詳しい話は事務所で。同じ捨てるんなら審神者になってからでも遅くはないですよ。おじょーさん」
表情はわからないが、笑っているように感じられて私は不愉快な気持ちになった。
顔が見えなくても胡散臭い感じがする。
いや、見えないからこそ胡散臭い感じがするのだな。
失礼だとは思うけど人をいじめて喜ぶようなサディストの雰囲気があるし、とにかく怪しい。何もかもが、全部が怪しい。
でも、不審者さんの言っていることはよくわからないが私に何かしらの役目を与えてくれるらしい。
どうせ捨てる命なら最後くらいは人の役に立って死ぬのもいいかもしれない。
「その審神者ってものが何かは知らないけど……やろうかな。あなたが言っていたように同じ捨てるのなら役に立ってから捨てるよ」
「ひひっ、くわしー話も聞かずに即決っておじょーさん……本当、人生諦めてるねー?そんじゃまあいろいろ話したいから一緒にいこかー」
何をさせられるのかわからない。
もしかしたら犯罪かもしれない、けど……なぜだろう。
必要としてもらえたようで私は、嬉しかった。
どんな危険なことでも人の道から外れたことでも、必要とされたことが嬉しい。
ただ、それだけ。
「あ、そうだ。あなたのその見た目とか怪しすぎるんで今後は誰にでも声をかけないでくださいね?通報されますよ?」
「うっさいわ小娘!」
敬語キャラを捨てましたね。