第1章 始
ふぅ、と空を見上げて昔を思い出す。
母も私が子供の頃はちゃんと見てくれていたのにな。小さいときから、上を目指すように言われていたこともあり勉強に関してはすごく厳しくされたが同時に母は私に構ってくれていた。
だが子供らしい育て方なんてされたことがなかった気がする。
自分達の評価とか気にしてばかりの親。
私は偉い両親から生み出された将来を期待された子供。だけど期待とは裏腹に私はとても平凡な娘だった。
生まれてきたことを後悔しろ。
土下座して謝れ。
いらない、どこか行け。
あぁ、どうしよう。
黒くなる、苦くなる。
私の心、真っ黒になっちゃう。
もう、いいかな。両親からすれば私はいらない子、必要のない子、生きてる意味なんてなにもないのだから。
深呼吸をしてゆっくりと目を閉じる。
不思議と恐怖は感じられなかった。ただ一歩踏み出すだけで終わる。痛みがあるのか苦しみが待っているのかなんて考えない。
ただ、願うのは痛みも苦しみもなく終えること。
「さよな……」
「その命、私達のために使ってみませんか」
飛び降りようとしたとき、後ろから声が聞こえてハッとして振り返る。