第48章 甘えられる人
燭台切「苦しそうだね……ね、僕を見て……錯覚でもいい。僕を好きだって錯覚してくれてもいいんだよ」
そう囁く燭台切さんに私は顔をあげて彼のことを見つめる。
綺麗な、顔。
あぁ、彼は……つらくないのかな、痛くない、のかな。
苦しかったり、泣きたくなったりしないのかな。
「っ……だ、いじょうぶ…?どこも、痛く…ない?」
燭台切「え……」
そうだ、もし私が飲んでしまったものが毒だったのなら口移しするために燭台切さんは液体を口に含んだのだ。少量でも唾液と共に飲み込んでしまって何もないとは思えない。
だから……
「大丈夫、大丈夫……痛くない、痛く、ない…よ」
両手を伸ばし、頬に触れてふにゃっと力なく笑う。
目が回る。
ムカムカして今にも口から何か出してしまいそうになるくらい気持ち悪い。
でも、自分のことよりも彼のことが気になった。
つらいならそばにいてあげなきゃ。
痛いのなら痛みをとってあげなきゃ。
苦しいのなら、私が代わってあげなきゃ。
大丈夫、私なら痛くても苦しくても辛くても耐えられる。
彼らを幸せにするんだ。
不幸になんてさせない。
「も、だい…じょーぶ……れふか、は」
安心させるように何度も大丈夫と言って頬を撫でてやれば、熱さと苦しさが限界に近づいていた私は最後に燭台切さんを見ると驚いたように私を見ている瞳と目があった、気がした。