第48章 甘えられる人
「少し……休みたいな」
燭台切「それじゃ、僕の部屋に行こうか」
燭台切さんの部屋ってどこだっけ。
ここから近いのかすら私にはわからなかったが、彼が部屋にと言うのなら私はついていくだけだ。
でも燭台切さんの部屋って……
「長谷部達と同じ部屋でしたっけ?」
燭台切「ううん、長谷部くんは一人部屋を使ってて僕らの部屋は鶴さんとか帰ってこなかったりするけど伽羅ちゃんと鶴さんと三人で一部屋を使わせてもらっているよ」
私は部屋決めの際にはなにも協力できなかったのでみんな各々好きな部屋を使ってもらってるけど……鶴丸さんとお散歩したときに、それなりには部屋の把握をしたのだがいまだに覚えきれていないんだよね。
粟田口の部屋である広い部屋の近くには誰々がいる、大浴場の近くの部屋は誰々がいる、みたいな覚え方だからな……
「……鶴丸さんや伽羅ちゃんいるといいな」
燭台切「僕としては二人きりがいいんだけどな?」
「はい!?な、なに言ってるんですかもうっ……」
平然とそういうことをいうから困ってしまう。
まるで自分に惚れさせようとする殿方のよう、な…あ。
思い出したようにポケットの中をまさぐると小さな小瓶を出す。
燭台切「何かの薬かな?」
「惚れ薬だそうですよ」
燭台切「へー……え?そ、それは誰かに使わせようと…」
いやいやいや。
ブンブンと首を横に振る。
「薬研くんが……たぶん、遊び心で作ったものを譲ってもらったんですよ。試作品みたいで本当に効果があるかわからないし、薬ですからね…万が一にも毒や副作用がきついものなら遊び半分で刀剣男士の誰かが飲んだら危険ですから」
燭台切「あぁ…彼が作ったのならきっと大丈夫だよ。前から回復薬とか作ってくれていたからね」
なにそれ初耳。
回復薬とか作れる刀剣男士なんてレアですよね。
まあ、それはまた今度聞くとして…なら、この瓶の中身は本当に惚れ薬の可能性があるのか。
捨てるのは勿体無いし自分で試して……それ、楽しくないな。
惚れ薬=誰かに惚れるってことは、一時的にでも誰かに惚れたりしたら……とんでもないことになる。
楽しくない以前に恐ろしい。
よし、封印しよう。