第46章 頑張りたいのに
「誰もいない、かな」
食堂につくと誰もいなかった。
用もないのに食堂に人がいる方が不思議ではあるけど、いつもなら……なんて考えてしまいそうになると適当に何か摘まもうと調理場の方にいくとガタンっと物音がしてビクッと身体が跳ねる。
びっくりした……。
「だ、誰ですか……」
歌仙「あぁ、やっと来たね。きみは本当何度言っても時間を守らないから困ってしまうよ」
どうやら音をたてた主は歌仙さんだったようだ。開きの中を漁っていたように見えたけどまさか……
「食い物を探してる……?」
歌仙「きみじゃないんだから、そんなことしないよ」
あれ、なんか失礼なこと言われた。
私だってそんなこと……多分しない。
「……あの、さっき……やっと来たって言ってましたが……」
歌仙「お腹が空いたのだろう?何か作ってあげようかと思ってね」
「…………?ぁ、えっと……それは作ってたやつがなくなったから仕方なく作るとかそういう……?なら大丈夫ですよ。氷とか食べてますし」
私はなぜ歌仙さんがそんなことを言ったのか理解できなかった。
残り物がないのは私が早くに来なかったからだし、それは自業自得なのでなかったら諦めるつもりでいた。
なのに歌仙さんは何かを作ると申し出てくれた。
なんで……
歌仙「氷なんて食べてたら顎を痛めるよ。身体だって冷やすだろうし、ほら僕の気が変わらないうちに」
わからない。
なぜそんな優しいことを言ってくれるのか……でも、うん……お腹、空いたし……
「……お、オムライス……真っ赤に染められたご飯を卵で巻いた食べ物、食べたいです」
歌仙「真っ赤にって……もう少し言葉を選んだらどうだい。まったく雅じゃない」
私に雅を求めないでいただきたいな。