第44章 変態でした △
燭台切side
「…………うっ」
主と離れ、部屋に戻る途中で限界が来て壁にもたれるようにしながらその場に座り込む。
ここまで何事もなく帰れてよかったと心底安心した。
万屋から離れた辺りから主から香る甘い匂いが鼻孔をくすぐる度に、何度も触れたくなってしまっていた。
華奢な身体をこの腕に収めて耳元で言葉を囁けばきっと主は顔を真っ赤にして狼狽える。
押しの弱い主は僕達を拒むことはしない。
僕達の幸せを願い、自分のことは後回しにしている。
だからきっとあの時、触れたいと僕が言ったのなら主は迷いながらも最後には頷いてくれたに違いないのに、主の……彼女を困らせたくなくて僕は我慢した。
「でも……ッ……これは、きついなぁ」
手だけ握らせてもらえたけど、それがいけなかった。
もっとほしくなって、より深く強く主を求めてしまいそうになった。
「ただの可愛らしい女の子だと思っていたのになぁ」
審神者なんて信じようとは思わなかった。
あの子もどこかおかしい、歪んでいるに違いないと思っていたのに……彼女の目はいつだって僕たちをしっかりと見つめてくれた。
前の主は僕たちのことを、道具としてしか見てなかったのにあの子は温かくて優しい眼差しで見つめてくれていた。
優しくて一生懸命な僕の主。
「……いい子なのに……壊してしまいたいと思うのはいけないことだよね……」
身体が熱い。
目眩がする。
我慢なんてせずに欲望のままにあの子を犯していたのなら……あの子は、笑っていられたのかな。