第44章 変態でした △
「そして私はそんな性格だったこともあり、誰とも仲よくできませんでした」
燭台切「……僕たちの前では明るくて何事にも一生懸命女の子だと思っていたから想像つかないね」
「自分でもびっくりです。なぜ刀剣達にできることをあの人たちにもできなかったのか……」
仲良くしたいとは思っていたはずなのに私はそれができなかった。
なのにここでは彼らと仲良くしたい、彼らを幸せにしたいという気持ちが強くて自分にできることを考えて、悩んだりしている……。
あちらではクラスメイトにいじわるされていたからそんな人たちとは仲良くできないと思っていたんだっけ……いや、でもこっちではいじわるどころか殺意を向けられいつ刺されてもおかしくない状況で……
「……自分のことなのにわからないなんて変ですね。なんだか所々の記憶を少しずつ抜かれて無理に記憶を繋げられているような感じがして少し気持ち悪いです」
燭台切「……それは主にとって嫌な記憶だけを忘れたんじゃないかな?自身を守るために嫌な記憶だけを忘れることもあるだろうし」
「……嫌な記憶だからこそ深く刻みついて忘れられないかと思いますが……」
だから、母に言われた苦い記憶はいつまでも消えてはくれない。
あの目、あの声……すべてが気持ち悪くて忘れてしまいたいのに忘れられずに困っている。
身体にも残っているか、ら……?
「あれ……身体に、何があるっけ」
燭台切「ん?」
腕には何もない。
傷も痣もない綺麗な肌だ。
なのに自分の腕を見ているとたくさんの痣などがあったように思えてきて、気持ち悪くて目をそらした。
「……っ」
燭台切「……今日は何か食べたいものはある?」
「お魚さん……食べたいな。川にいる魚と……豆腐のお味噌汁」
燭台切「ん、じゃ今日は魚にするね」
手をぎゅっと握られると燭台切さんは優しく笑いかけてくれる。
それがとても嬉しく温かくて瞳が潤んでいく。
そうだ、私の居場所はあんな醜く汚い場所ではなく彼らのいるこの世界だけなのだ……。
いつか本当に忘れられたら、いいな。