第40章 愉快
「……まったく。人が仕事してないみたいに……こげん頑張っとーちゅうとに……」
近くに置いてあった赤く滲む飴玉が入ったガラス瓶を手に取る。
そこから一つ飴玉を手に取れば光に翳してその輝きを見てから口のなかにへと放り込む。
甘くて、ねっとりとした味。
俺、自家製の特別な飴。
「うっまぁ……」
この味は他では味わうことのできない特別なもの。
口のなかで転がし十分に味わったあとに噛み砕くとそこから溢れるはドロッとした濃密な甘み。
癖になるほどの味に夢中になるのは俺だけとは限らない。
一度味わえばまた味わいたくなる。
まるで毒だ。
そんな毒を一つ、また一つと口に運ぶ。
「ほんま毒みたいやね……なぁ、研究者を目指してた審神者ちゃん?」
机においてあった封のお札を貼られた一つの瓶を見つめる。
魂を封じ込めた特別なもの。
そう、あのボロボロな本丸にいた……殺された審神者の魂が入っている瓶。
自分の集めた刀達を横から奪われたことに怒っている彼女はそのままにはしておけなかった。
成仏できないほど彼らに執着しとったんか、まだまだ彼らの身体を弄くっていたい執念かは知らんけどあのまま自由にさせていればいずれはあの子の身体を乗っ取ってしまっていたはずや。
乗っ取った後は……まあ、想像せんでも前のように刀を解体させて研究し、気に入った刀とは夜を共にする。
そんな自堕落な毎日を過ごすのは目に見えている。
だが何より……あの子の身体に入って好き勝手させることを俺が許すわけないだろう。
あれは俺の玩具なんやから……
「可愛い可愛い俺の審神者ちゃん……もっともっと楽しませてやぁ?なぁ……なつみ」
引き出しから一枚の写真を取るとそれを優しく撫でる。
ほんま、この子のやることは面白うて好きやわぁ。