第39章 吸血
「……幸せ、だな」
平和だ。
敵が現れなければ彼らも平和な時間を過ごせるのだろうが、彼らはどう考えているのだろう。
刀は本来、人を殺める武器として使われてきた。
だからなかにはいろんな人の血を浴びてきた刀もいれば、その逆に観賞用としてそばに置かれていた刀もいる。
だから戦に出ることに抵抗がある刀もいれば、戦いは嫌だと言う刀もいるはず……彼らの本音も聞かず戦いを任せて送り出してきたが本当は嫌だって思っていたんじゃ……前任のこともあって痛みなどに恐れを感じているものも必ずいるはずだ。
彼らの心には深く傷つけられた傷があるのに……配慮が足りなかった。
本当、気づくのが遅いんだから。
「私だけが幸せになっちゃいけないのに……」
情けない。
最近、同じことを感じたような……私はなにも成長、していないのだろうか
燭台切さんから借りた上着を脱ぐと、それを抱くようにして深呼吸を繰り返す。
彼らにひどいことをした人間と私は同じ種族なのに彼らは私に優しくしてくれる。
だからもっとがんばってその優しさに応えられる審神者にならなきゃ……
「……くちっ……ふぅ、ちょっと冷えてきっ……」
そう決意を固めていると背後から、なにか足音のような音が聞こえ心臓が跳ねる。
ここには五十人くらい住んでいるのだから足音くらい普通に聞こえるよね……。
でもここって一応和風のお屋敷なわけだし、和風=人ならざるものがいるっていうのがお約束な感じがするので刀剣の誰かがとはわかっていても振り返ることができない。
決して怖いとかそういうのじゃない。
今日は首が痛くて振り返られるほど首の痛みは軽いものではないわけで……でも、気になるし……や、自棄だ!
「ッ……こ、こんばんは!」
勢いで背後を見る。
目を閉じているのは怖いとかじゃ……いや、もういいや。
ゆっくりと目を開けるとそこには、ちゃんと足と影のある人がいてほっとするも……
「き、よみつ……」