第39章 吸血
「これでよし…………なんか三途の川を渡る人みたいな格好」
脱衣所には姿見があったのでそれで見てみるが曇ってなにも見えない。
大浴場の脱衣所でも思ったが、なぜ脱衣所に姿見を置いてるんだろう。
お風呂上がりに自分の姿を見るのが好きだったのだろうか……とりあえず鏡を拭いておこう。
適当なタオルで拭くと綺麗とまではいかなくとも姿を映してくれるくらいにはなったので満足して改めて自分の格好を見てみるが……何か違和感。
着物は着物なんだろうけど……白装束?
一緒に三角の頭につけるあれもあったからつけてみたが……どう見たってこれから三途の川を渡る人達の一員にしか見えない。
妖精か刀剣男士の誰かが置いたか知らないが何を思ってこんなものを……遠回しに永遠に眠れって言われているのだろうか。
私を嫌う人……刀もいるだろうなとは思っていたけど追い出すことを諦め命を狙っていたり……?
「……深い意味はないと思うことにしよう」
必ずしも刀剣男士の誰かが置いたとは限らない。
もし、置いていたとしてもそれは忘れやすい私への優しい配慮と考えてもいいだろう。
飴玉を口のなかに放り込むとそれ以上のネガティブ思考は中止した。
疑うよりも信じることから始める。
そう決めたのは私なのだから。
「……お腹空いたし、食堂に行こうかな」
何をするにもまずは腹ごしらえだ。
今日はたくあん出てるかな……?