第36章 距離感
「みんなただいまー!」
勢いよく襖を開ける。
これ、結構楽しいな。
次郎「やぁっと戻ってきたね!」
「うわっ……とと……じ、次郎太刀様ッ……」
次郎「んん?様ぁ……?そんなよそよそしい呼び方しなくてもいいって!」
「あー……そ、そうだね……次郎さん」
仲良くなるためには親しみを込めて呼ぶべきだと考えていたが彼らの場合、難しかったりする。
彼らは神様だ。
私が許可なくフレンドリーな態度をとっていい人たちでもないのだ。
次郎さんのように優しい人もいるがなかには馴れ馴れしいと嫌がる人もいるかもしれない……様付けで呼ぶべきなのかフレンドリーでいくべきなのか悩むところだ。
「次郎さん……お酒が大好きなのはわかってはいるんですが飲みすぎると身体に良くないですよ?」
次郎「なーに言ってんだい。酒は百薬の長と言うじゃないの」
「いや、それはあくまでも適量、だから。そんなグビグビ飲むものでもないよ。お酒は毒にもなるんだから……」
次郎「アンタにはまだこれの良さはわからないだろうからねぇ~」
次郎さんのお酒好きは見ていてすぐわかったのだが、いつも片手に酒瓶を持っているイメージがあるからここは主として禁酒とまではいかなくても控えるように注意すべき、と思ったがそう簡単に納得してくれそうな理由もないので控えさせることはできそうにない。
飲みすぎは身体に毒ではあるけど……人間と刀とでは身体の作りが違うのだろうか。
前に時代劇で口に含んだ酒をぶーっ!って吹き出して刀にかけていたのを見たことあるし、人の身体を得ても刀からしたらお酒は大事なエネルギーに……わからん。
「……では次郎さん、大切に飲まないと次飲もうって思っても貧乏本丸にはあれやこれやとお酒を買ってあげられるほどの余裕はありません!あとみんなのお給金も……お気持ちしか渡せないのでお酒が切れないよう気をつけてくださいね」
次郎「アンタ……相当にここ貧乏だったんたね」
「まぁ……すいません」
貧乏と感じるのは私の手腕の問題でもある。
長谷部は頑張ってくれているが、それでも全然間に合わない。
みんなの食事代に必需品に、お給金に……もっと稼がないと。